小松弘子のブログ

やさしいエッセー

ビニール製温室を組み立てる

 十一月も残すところ、あと一週間になってしまった。最近まで庭に咲いていた草花も、少しだけ元気がなくなったように見えた。

 そうだ、冬の寒さに備えて暖かな場所に、移動させる時期になったのだ。例えば宿根草の 「成金草、ゼラニュウーム、夜に花が咲く月下美人」 など、数は少ないが、寒さに弱い。

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 毎年十一月下旬には、ビニールの温室に移動して、春まで保存している。去年までは横一メートル二十センチ、横二メートル、高さ二メートルのものを二台も組み立てていた。今年は組立が面倒くさくなり、一台に減らそうと考えた。

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 そこで春頃から、なるべくハウスが必用となる草花を、増やさないように心がけた。特に今秋は来春に向けて咲く球根類も、寒さに強いものばかりを選んでプランターに植えた。チューリップやスイセンサクラソウ、パンジーなどである。

 ところが結局のところ、いつもの悪い癖が直らずに、花類や野菜の種をまいてしまった。ふとプランターを数えたが、全然減っていないのに気がついた。

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 ああ、しまった。またまた息子達に簡易温室の組立を、頼まなければならない。少し寒い日が続いたので気持ちが焦ったのだった。

 次の日、息子に思い切って声をかけた。

「悪いけれど、寒くなったので温室の組み立てをお願いしたいのよ。手伝ってもらえるかしら?」

 今日は運よく息子達が引き受けてくれたので、本当に助かった。すぐに車庫から一年間保管していた、ビニール製温室を取り出した。早いものであれから、もう一年が過ぎてしまったのだ。

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 早速包みを開いて、部品などを取り出した。説明書を見ながら、組みたて始めたが上手く進まなくなった。ポールの数が足らない支柱が出てきたのだ。

「アレー、ここまで組み立てたのに、どうなっているのかしら?」

 私は一瞬、愕然とした。昨年の記憶では、簡単に組み立てられた筈なのに…。どうも間違っているようだった。そう思いながらも、皆で組み立てていった。

 ふと、私は形が少し違っているのに気がついたので、

「ちょっと待って! どうも見本の物と違っているよ」

 と思わず言った。それを聞いた息子が、

「エエッツ、本当やなあ。このまま組み立てていけば、全然違う大きさになってしまうわ」

 と、言うなり温室を見上げた。

 そこで皆で説明書の完成品の図面を見直した。日本製ではないので、あまり信用できない。良く見直すと出来上がりの寸法だけしか、図面に載せていなかった。

 これでは消費者にとって、分かりずらいと思った。買いやすい値段だが、図面があまり親切ではない。

 しかしながら、昨年は簡単に組み立てられたのに不思議だ。記憶というのは結構、「あてにならない」 と、思った。皆、歳をとったせいなのだろうか?

「説明書の絵の通り、組み立てたけれどなあ…」

その時だった。息子が叫んだ。

「ああ、間違いの原因が分かったよ!」

 と言って、縦横、奥行きの寸法を測り直した。

「なるほど、間違いの根本は、ポール別に全部の寸法を正しく測ってなかったからだよ。先に簡単に組み立てられる棚から、作り始めたら作りやすかったかもね。似たようなポールが四十本以上あるので、何か良い方法を考えよう」

 と言った。私達は早く完成させようとして失敗したのだ。「急がば回れ!」 の諺を想った。

 それから最初からやり直すことにした。今度は一時間くらいで完成することができた。

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 皆で 「成金草、月下美人草」 などを、温室に収納することができホッとした。また、息子は来年のために、各種ポールごとに記号を入れて、識別表まで作ってくれた。ああ、感謝で一杯だった。

 

2020/11/29 #90