小松弘子のブログ

やさしいエッセー

アニメ映画 すずめの戸締り

   

 残暑が残暑が厳しい九月の下旬に、神戸市のハーバーランドへ、アニメ映画を見に行くことになった。六月から九月にかけて映画館に行くのは今回で六回目である。まあ、人生七十年になるが、こんなに頻繁に映画館へ足を運ぶのは珍しくもあり、正直に言って自分でも不思議だ。

 今まではテレビや新聞を見ている時、偶然に興味を持った作品の公開を知り、すぐに映画館まで行きたくなる癖があった。話題性があろうがなかろうが別問題であり、ただその度に失敗もあるが、思った以上に感動の渦に巻き込まれ喜ぶこともある。当時は年に数回だったので後悔はないが…。

 さて、ある日息子が一枚分の映画の無料券があるので、一人でアニメ映画 「すずめの戸締り」 を見に行くからと言った。

「エエッツ、今から行くの? それにしても 「すずめの戸締り」 って、題名が面白いので興味があるわ」

 というと、

「お母さんは何も知らないんだね、「すずめ」というのは映画の主人公の名前なんだよ。それに 原作も

「新海 誠さん」 の大作なんだよね」

「そうなんだ、知らなかったけれどぜひ見に行きたいわ」

「ヘーッツ、そう感じただけで観に行くの?」

「もちろんよ!」

 息子は何かブツブツと言っていたようだが、いつもの私の独断と偏見には歯が立たないようだった。

とは言っても、まだ朝の十時過ぎで家事が終わっていない時間帯だ。が、考えてみると、この後の予定の別段何もない。夕方までとても暇になる…。時間が勿体ない。家事は帰ってからでも良いではないか? 近頃はあまり外出をしていないので、運動不足気味だし、ちょうどいいチャンスかもしれない。そうだ、何の映画でも良いから一緒に行かない手はない。

「さあ、今からその映画を観に行こうよ」

ところが、息子の返事は乗り気ではなかった。

「お母さん、本気なの? 前回も映画館で居眠りしていたやんか? いつも僕が横を見た時、気持ちよさそうに寝ているみたいやったけれどなあ。映画代も高いし、もったいないわ」 

と、言われたが、

「そんなことないわ。最近は特にアニメ映画はすごく画質も綺麗で、とても感動する物語が多いので映画館迄行く価値はあると思うのよ」

「ウーン、家にいても暇だし、じゃあ今から映画館へ行くことにしようか」

と、賛成してくれた。

神戸市のハーバーランドにある映画館迄車を走らせた。急いで出かけたが平日なので駐車場は空いていた。

「あー、上映時間に間に合って良かったわ。あんまりスピードを出すから本当は心配だったのよ」「スピードなんか出していないよ」

息子の言う通りで、私の身体が車のスピードについて行けないのだろう。言われてみれば今年になって特に老化を感じる。風貌にもどことなく年令を感じる。それなのに無理をして、要は老けや “ぼけ” を遠ざけようとあくせくしているのだろう。必要以上に脳や身体を少しでも若くしたいと思っているせいだ。残念だけど年にはかなわない。無理は禁物だ。

そうだ、今日から自然態で生きる方が良い。その為にアニメ映画を見て気持ちだけ若返ろう…。

「お母さん、座席へ早く来て、始まるよ」

 息子の声に我に返った。いよいよスクリーンに映し出された 「すずめの戸締り」 が、目に入った。大きな画面に登場した高校二年生の主人公を見た時、自分の若かった姿があった。

 不思議な感覚だが、瞬間に映画の主人公になり切れそうだった。多くの女性は物語の中に入ってしまえる。その反面、男性は理性的になのだろうか、たまに息子にその話題をすると馬鹿にされる。

 上映中の映画なので、物語の内容は個人のお楽しみでありカットしますが、私はもう一度映画館でこの 「すずめの戸締り」 をみたいと思います。

#すずめの戸締まり