小松弘子のブログ

やさしいエッセー

鞆の浦、尾道、湯原温泉の旅㈠

一月三日から息子と友人と三人で一泊二日の、広島県岡山県方面の旅に出かけた。 昨年の夏は皆の日程が上手くかみ合わず、結局のところ実現できなかった。

 そのためにこの半年を、もやもやとした気分のまま、せっかくの休暇をだらだらと無意味に過ごして、後悔する日々を過ごしていた。

 そこで今年は何とか、悔いを残さないような一年にしたい。お正月休暇を利用して、手軽に行ける旅にトライしようと思っていた。

 元日の朝、テレビの天気予報を見ると、晴れの日が五日間もつづくらしい。さあ、旅のチャンスがやって来た。

 お雑煮を食べ終えた息子が、部屋に来たので、

「今年のお正月は暖冬だし、天気も長く続きそうね。家でゴロゴロしていても、何か時間がもったいないわね。近場でどこかに旅に行ってみない?」

 と言って様子をうかがった。

「また、お母さんのいつもの癖が始まったな。でもその通りで、どこかに旅行したいな」

「本当にお正月の旅ができたら嬉しいわ!」

 私と同様、年末まで結構忙しくしていた息子の本音を聞いた気がした。

「のんびりと温泉につかりたいな。まだ行っていない近場が見つかったら一番良いけれど…」

 と言って、早速スマホで探がしてくれた。

「そうやなー。一泊となると東方面は、もう空きの宿がないかもしれない。もし宿が探せても値段が高いものしか残っていないだろう。そうなると兵庫県北部の城崎方面とか、岡山県広島県に限定されるけれど、それで良いかな?」

 結構、結構…。

「でも、岡山県方面は今までに随分見物したよね。同じ所の旅は、はっきり言って面白くないな」

 危うい、危うい…。

「そうよねー。その通り、お馴染みのところは飽きるよね。ちょっと待って。 『旅の本』 を探してくるわ」

 私は慌ててこっそり用意をしていた 『旅の本』 を息子に渡した。

「ウーン、どこを見てもパッとしないな!」

 そんなこと言わないでよ! 息子は半ばうんざりした面持ちだった。

しばらくして息子の明るい声がした。

「あっ、綺麗な景色の写真がある! 『鞆の浦』 と書いるページを見つけたよ。初めての場所だけれど、どうだろう?」

 しめ、しめ。作戦成功!

「わあ、写真を見たけれどすごく良い所みたいね。 『鞆の浦』 何といっても語感が素敵だわ。何か歴史を感じそうな風景が見えるわ」

「へえー。そうかなー? あまりそこのところは知らんわ」

 歴史にあまり興味のない素振りの返答だった。

「確かなことは忘れたけれど、まあどんなところか一度行ってみたいわ」

 とにかく息子に旅の実現の答えを期待するしかないのだ。

 結局いろいろ検討して、旅の初日は主に、 『鞆の浦』 と 『尾道方面』 へ決定した。

「あとはその日の行動次第で、予定を決めれば良いのじゃない?」

と息子に言うと、

「もう、お母さん…。いい加減なことを言わないでよ。きっちりどこへ行きたいのか決めないとだめだよ」

と少しむっとした顔になっていたので、

「ごめん、ごめん。やっぱりちゃんとした予定をしないとまずいわね」

と言うと、

「当たり前だよ!」

旅に行けなくなるとまずいので、すぐに話題を変えた。

「そうだ、友人のOさんに早く連絡をしないとね」

すぐに連絡を取ると、一緒に行きたいと言ってくれたのでほっとした。そのことを息子に伝えると、すぐにスマホで宿泊先を見つけてくれた。

つづく…