小松弘子のブログ

やさしいエッセー

森林のもみじ巡り

 今秋も昨年と同様に、家族と六甲山や再度山のもみじ見物にでかけた。紅葉は朝日の注す間に眺めるのが一番美しいと思う。

 太陽の光を一杯に吸収した葉っぱは、真っ赤や黄色に鮮明に色づいて、一層に美しさを増す。

 夕暮れからの風景も、それなりの趣はある。しかしながら秋の山は光が弱いのが難点だ。せっかくの美しさが半減する。しかも肌寒くなるので、上着一枚を持参する必要がある。

 ある時、友人に誘われて、京都のもみじのライトアップの鑑賞会を体験したことがあった。初めてのライトアップは、予想以上の綺麗さで衝撃的であった。お寺の境内から強いライトに照らし出された紅葉は、まるで別世界の景色だった。映画のスクリーンを見ている錯覚にとらわれた。

 正直なところ、その独特の美しさに目を奪われ感激した。赤や黄色、オレンジ色の葉っぱが、少し妖艶めいた不思議さを醸し出していた。

とても綺麗な印象を持ったが、それ以降は桜のライトアップも、興味が薄れてしまった。

 もみじに限っては、太陽に輝く自然な色の方が、私は好きかもしれない。単純にいえば時と場所を選ぶことなく、気軽に自然に親しみ合いたい…。

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 そんなことを思い出しながら、広大な規模の森林植物園内の施設や展示林を見て回った。 「いろはもみじ」 や 真っ赤に紅葉した「こはうちわかえで」 などを観賞しながら散策を続けた。

 この日は先週より観光客が際立って多かった。ただ子供の姿はほとんど見なかった。若者と中高年世代が目立った。六十五歳以上は無料で入場できた。

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再度公園

 一時間くらい散策したが、ところどころにイノシシが荒らした形跡が目に入った。街から結構山深い場所に位置するところには、羊とかを放牧している牧場があった。「カモシカ園」や「ウサギ園」 も作っているらしい。 

 さて昨日のこと、近くに住む次男家族が家を尋ねてくれた。早速、私は森林植物園に行ったことを報告した。

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「あのね。このあいだ再度山と六甲にある植物園へ行ってきたのよ。すっかり紅葉が始まって、とても綺麗だったわ。子供達と一緒に散策したらいいわよ」

 と、紅葉見物を薦めた。

「でもさあ、子供が喜んで遊ぶ公園とかでないと無理やなあ。もみじなんかあまり興味がないよ」

 次男がそっけなく言ったので、私はがっかりだった。

「そうよね、紅葉など見ても子供は面白くないわね」

 と私が言うと、すぐにお嫁さんが気を遣ってくれたようで、次男に

「あのう、まだ神戸市立森林植物園に行ったことがないので、是非一度だけでも紅葉が見たいわ」

 と、代弁してくれた。

「ああ、そういえばまだ君を連れて行ってないな。紅葉も綺麗そうだし見物に行こうか? あの近くに 「ちびっこ広場」 もあるみたいで良いところだし…」

 と、次男がお嫁さんの手前、仕方なく相槌を打ってくれた。私自身はもう孫達も小学生四年と二年生になり、自然の恵みの感動が分かっているように思うのだが…。

 時々、家の近くの運動公園で出会うことがあった。

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「おばあちゃんの家には、キュウリやトマトがいつもなっているね。僕の家はまだ何も植えてないよ。早く作ってほしいといと頼んでいるけれど、今は忙しくて駄目なんだよ。いつになったら植えてくれるのかなあ?」

 今年の夏に次男家族の小さな庭で、簡単な菜園を皆で作り、きゅうりやトマトが摂れたらしい。

 やれやれ、何よりだ。また以前に孫がくれた一粒の 「どんぐり」 の実が、四年目を迎えた。毎日大きくなるのが楽しみで眺めている。 

 

2020/11/24 #89