新しい美容室とカラオケ店を見つけた
歌を習い始めてから、もう二十四年が過ぎた。「光陰矢の如し」 年月が流れるのは早いものだ。お稽古ごとも続けている最中は、無我夢中で頑張ってきた。
結婚後、働きながら合間を見て体操教室に二十年、社交ダンス十年、他いろいろのお稽古を重ねてきた。まあ半分はお遊びみたいなものだろうが、その間は一生懸命だったと思う。
「形あるものも無いものも、いつか消滅の道をたどる。 そしてまた新しいものが芽生えてくる」
それが分かっていたのか、いなかったのか定かではないが…。時代の流れや、自分の周りの人の変化など、常に日々目まぐるしく動いているのだ。何でも終息が来ることを、意識しないでいたかもしれない。
ある日、その時がやってきた。長い間、お世話になったカラオケ店が、急に閉店すると告げられた。今に時期でも、当分の間はお店を続けると思っていたのだが、予想に反して閉店が早くなった。
最近のコロナ禍の影響や、いろんな諸事情で閉店を決断されたのだろうか? 生徒たちは本当に残念がっていた。
思い起こせば、そのお店で二十年程、先生に歌謡曲や演歌などを教えてもらった。歌を習いながら仲間との楽しい思い出が、沢山作られていった。歌を覚えるだけでなく、沢山の勉強と充実した楽しい時間を過ごさせてもらった。先生ご夫婦や皆にも感謝の念で一杯だ。
結局のところ、これを機に自分は趣味の歌を諦めてしまうのだろうか? そんな悶々とした気持ちを、歌の仲間と話した。皆同じような悩みを抱えていたが、お互いに自分一人ではないことが分かると、少し元気が出たみたいだった。
ある日、気分転換のため新しい美容院に行ってみようと思った。なぜか女性は髪を切ると、不思議に過去に別れを告げられる。たいがいの悩みは吹っ切れそうに思う。まさしく嘘みたいな話だが気分爽快になれる。これしきで元気になれるのだから、幸せな人種かも…。
「ごめんください!」
私は躊躇することなく、初めての美容室の門をノックした。
「ハーイ、いらっしゃいませ。中にどうぞ。良かったら椅子にお掛け下さいませ」
可愛らしさの感じられるお店であった。中に入ると先生らしき中年の女性と、若い美容師さんの二人が、愛想よく迎えてくれた。
「こんにちは、初めまして。素敵なお店ですね。実は私の通っている体操教室の先生に、以前お聞きしたことがありお伺いしたのです。今日はよろしくお願いします」
「まあ、お教室の生徒さんでしたのね。それは良かったです。あの方は先日お越し下さったのよ。さあ、お座りください」
とお互いに挨拶を交わし、案内にされた椅子に座った。
「今日はどのような髪形にされますか?」
「はい、時間があまりないのでマニキュアだけにします」
本当はパーマをしたかったが、これ以上髪の毛が短くなるのは、少し抵抗があったのだ。三カ月前に夏の暑さに耐え切れず、思い切ってバッサリとショートカットにしたことがあった。
その時、鏡に映ったイメージチェンジヘアは良かった。しかしながら、二カ月も経つと余計に老けた感じになってしまった。その後、ショートカットの場合は、毎月美容院通いを余儀なくされると分かった。素敵なヘアスタイルを維持するのは、自分には無理がありそうだ。やっぱり今まで通りのセミロングにすべきだと思った…。
「ところで、このお近くでカラオケ店があれば、教えて頂けますか?」
「お薦めのお店があるので、良かったらご紹介しますよ。私もよく利用しているのよ」
と、カラオケ店の場所を教えてくれた。
早速、次の日行ってみた。結構広くて清潔感があり、とても綺麗なお店だった。歌ってみて感じたことは、マイクと音響効果が最高に良い。オーナーの妹さんという方も、親切で明るい人だった。最近はコロナ禍のせいで、お客さんの数が少なくて沢山歌えますよと教えてくれた。私にとって、この時期は安心して歌えるのが一番なので、良いお店が見つかって良かった。久しぶりに楽しい一日を過ごした。
2020/12/04 #91