小松弘子のブログ

やさしいエッセー

自分の健康は自分で守りたい

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 十二月第一週目の体操教室に通うため、いつもの市バスに乗った。朝起きた時は結構寒かったが、終点のバス停近くになると、太陽の光が眩しくなり、車内の窓際は随分暖かくなった。その間、街並みの景色は飽きることがない。閑静な住宅街やマンションは、朝日を浴びて一日の営みを待ちわびているかのようだ。

 ここ十年近くで、コーヒーショップやグルメのお店が、随分と多くなったことに驚いている。

 バスを降りて少し歩くと、スーパーの買い物客や、たまに赤ちゃんずれの若いお母さんに出会うこともある。乳母車の赤ちゃんは勿論マスクはしていなかった。赤ちゃんは免疫が高いのだろうか? ふと昔を思い出し、少し若返ったような錯覚を覚えた。

 あの頃はコロナなどなかったので、子供達と無防備で買い物などに行ったものだ。良い時代だったなあ…。昨今はどんな場所でも、外出の時は必ずマスク姿で過ごすことが、通常になってしまった。そのため人々の表情は分かりにくく、誰なのか区別がつかない。

 時折つい見間違うことがあり、反対に向こうから声をかけられたりもする。ああ、全く恥ずかしい。

 そんなことを考えているうちに、体操教室に着いた。教室が開くまでの数分間、体操仲間と雑談するのが楽しみになっている。教室のすぐ前に三本の真っ赤に紅葉した 「楓」 が植えられている。手前から一本ずつ美しく紅葉していく様は、長く私達を和ませてくれた。今は枯れ葉ばかりになり、その美しかった思い出だけが、脳裏に焼き付いている。

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 その 「楓」 の木の後ろ辺りに、五人位が見えたので手を振った。

「おはようございます。とうとう今年も師走になってしまったわね。特にコロナ禍の影響で、随分と一年が早く過ぎたように感じるわね。そう思わない?」

 と、向こうから先に声をかけてくれた。

「そうそう気がつけば、あっという間に十二月になってしまい、慌ててしまったわ。それにつけてもコロナの終息もワクチンも、今後どうなるのか分からないので怖いわね。このまま来年もまだまだコロナが続きそうで、嫌になってしまうわね」

「いつコロナに感染するのか、誰でも不安よね。万が一感染しても、軽く済むように体を鍛えなくてはいけないわね。健康は自分で守らないとね」

 おおかたの人が頷いていた。

「今月も皆で体操活動ができて良かったわね。健康維持のため、さあ頑張りましょう!

 そのうちにメンバーの人が揃ったので教室に入り、全員で床の拭き掃除をした。体操中もコロナの影響でマスクは欠かせない。

「マスクを付けて運動すると、とてもしんどいわ。外しても良いかしら?」

 すぐ横の人が、ふいに言ったので、

「そんなに辛かったら、マスクを外した方が良いと思うわ。お喋りの時は絶対に付けてね」

 と言ったが、周りの人は皆マスクをしていた。この教室はとても広く、窓が多く換気は充分できているので、何人かは安心して時々マスクを外す癖があった。しかしながら、今日はよく見ると大方の人は、帰るまでマスク姿を続けていたので、私は慌ててマスクをし直した。

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 帰宅後に親しい友人から電話があった。

「もしもし、楽しみにしていた会食の件のことなのよ。最近のニュースを見ると、コロナが酷くなっているらしくて、やっぱり辞めた方が良いと思うの。あなたはどう思う?」

「実はね、私も今朝になって考えたのだけれど、しばらくはお互いに、会食は控えた方が良いと考えていたのよ。健康は自分で守らないとね」

 ということで、本当に残念だったが、お互いにコロナを恨めしく思いながら、納得の上で中止をすることにした。一年ぶりに友人に会えるのを楽しみにしていたが、この時期は延期するのが得策だろう。

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 昨日、もう一人の友人に三カ月ぶりに安否の電話をかけた。ずーっと健康だと思い込んでいたのだが、その友人からの思いがけない言葉に、肝を冷やしたのだ。七十歳の誕生日を迎えたとたんに、第六感というか身体に異常を感じ、念のために病院へ足を運んだ。その時 「脳こうそく」 が発見され、即検査入院を迫られたらしいのだ。

 結局のところ発見が早やく、功を奏したのだった。日を追って症状もだんだん収まり、一週間位で退院できたそうだ。

「まあ、大事にならなくて本当に良かったわね。元気でいてね」

 と、言ったものの電話を持つ手が、震えて止まらなかった。自分はいつまでも健康でいられると過信していたが、そう単純な問題ではないことが分かった。

 何事も 「今日は人の身、明日は我が身」 なんだ。

「健康は自分で守らないといけない」 と思ったが、なかなか自分一人で守れる簡単なものではない。

 そこで明日から、できるだけ病気の早期発見、早期治療を心掛けようと強く思った。

 

 2020/12/10 #92