小松弘子のブログ

やさしいエッセー

春もみじ 見たことありますか

『春もみじ』 と、いう言葉、聞いたことがありますか? もう一つ、実際にそのもみじの美しさを、見たことがありますか?

f:id:komatsuhiroko:20200405103919j:plain

 実は私の家に、高さが一メートル二十センチの 『春もみじ』 の木が、一本だけあります。この珍しい? もみじは六年前の春に、四国参りをした時、香川県で偶然に見つけ、購入したのである。

 その時はただ綺麗な、紅葉だという印象で購入した。なぜならば一般に赤色の紅葉がもともとあり、別段に珍しくもないからだ。

ところが、『春もみじ』 を、家の庭に植えてから、一カ月を過ぎたとたんに、真っ赤だった葉っぱが、なんと緑色に変わったしまった。まるでカメレオンみたいに変色したのだ

「ええーっ、嘘でしょ。信じられない」 

秋に色づく紅葉と、全く逆の現象が起こったのだ。それには本当に驚いた。最初は木の名前も知らなかったが、数年経って 『春もみじ』 と、いうことが分かった。

時々、何人かに 『春もみじ』 の、ことを話したが、今でも知らない人が多かったので、少ない品種だと思っている。

毎年三月末に枝から、真っ赤な葉っぱが芽を出してくる。いつもその季節を待ち遠しく思っている。

今年も 『春もみじ』 の、観察に余念がない。木を植えてから三年位は、秋にも紅くならないかと密かに期待していた。しかし紅いのは春一回だけで、何年たっても秋には緑色のままだ。けれども健気に育っているのを見ると、いつまでも枯れることなく、成長し続けて欲しいと願っている。

さて、この 『春もみじ』」 に、出会ったのは、もう六年位前のことである。

 その春のある日、三人で徳島県のお寺を回ろうか、ということになった。お昼になったので、どこかでお弁当を食べよう、と息子が言い出した。

丁度、香川県の近くまでやって来たので、私はあることを思いつき、

「あのー、ちょっと寄りたいところがあるのだけれど良いかしら? 以前に香川県に有名な満濃池があると聞いていたの。折角、近くまで来たので、そこでお弁当を食べましょうよ」

 と、提案してみた。

「お母さんがどうしても満濃池に寄りのなら、皆で行ってみようか? ちょっとだけ帰りの時間が遅くなるけれど、仕方がないなあ。満濃池って、そんなに有名な池なの?」

f:id:komatsuhiroko:20200405105009j:plain

満濃池香川県

「うん、確か千二百年位前の有名な話にでてくるの。当時洪水が起きるたびに、この池が決壊して村人が困っていたらしいの。そのことを知った弘法大師さんが池を造り治すと、それ以降は大雨になっても、池の決壊が無くなったらしいの。この話は偶然にビデオで見てから、機会があれば一度 『満濃池』 を、見たいと思っていた訳なのよ」

f:id:komatsuhiroko:20200405104834j:plain

「へえー、そんな謂れがあったのか。歴史は苦手やけれど、まあそこへ行ってみよう」

と、二人が賛成してくれた。早速、私達は徳島県香川県の境にある、満濃池に向かって車を走らせた。道中は緑の畑や土手が沢山あり、この辺りはすっかり初夏を思わせた。

 香川県に入ってから三十分位で、満濃池に到着できた。徒歩十分位で池が見えてきた。池の周囲は広く美しい景色の中にあった。ここの池は日本で一番大きくて有名らしい。

「わあ、緑が綺麗で気持ちの良い風景やなあ。ここに来てよかったよ」 

 と、皆が言ってくれたのでホッとした。いよいよ池を一周してみようと歩いてみたが、結構時間がかかりそうなので、今回は半分くらいで諦めた。

 池の周辺に近づくと、地元の人々が物産展と植木市を開いていた。私だけが興味を持って見物に行った。

「早く来てー。綺麗な紅葉の苗木があるわよ」

「恥ずかしいから、大きな声を出さないでよ」

 と、息子にたしなめられた。

「ごめんなさい。でもこの紅葉は前から欲しかったのよ。絶対に買いたいの。いいでしょ」

「ああ、また衝動買いが始まった。こんなに早く、お土産を買ったら、荷台が一杯になり困るよ。植木なんか、どこにでも売っているから、やめた方が良いと思うよ。もしも買うのだったら、他の植木はもとに返えしておいてよ」

 と、息子に、いつもの調子で言われた。

「分かったわ。他の三種類は止めておくわ。でも、この紅葉だけは、満濃池にきた記念にどうしても買わせて!」

と、私が押し切ったので、結局は買うことになった。

もしも、息子が言うように、「どこにでもあるとか、今度にしよう」 と、欲しいものを買わないで、先延ばしにした場合、経験上、必ずその品物を買いそこなう事が多い。今までにも何回もあり後悔したので、特に逸品ものは、すぐに購入したほうが良いと思っている。

同じ月日がないように、チャンスは二度とめぐり合わないと肝に銘じている。海外旅行でのお土産品などは、不可能に近いと思っている。

帰宅してから、あらためて紅葉を眺めた。深紅の小さな紅葉の苗木。木の高さは六十センチと小さかったが、凛とした美しさは何よりも気に入った。

 あれから六年が過ぎたが、現在もこの 『春もみじ』は、健在で美しい色を保っている。まだ枝ぶりはきゃしゃであるが、いつか大きく成長してくれるだろうと、夢をつないでいる。

  終わりに、今咲いている花々の写真をいくつか上げてみました。

f:id:komatsuhiroko:20200405105847j:plain

f:id:komatsuhiroko:20200405105937j:plain

f:id:komatsuhiroko:20200405110025j:plain

f:id:komatsuhiroko:20200405110103j:plain

木の枝の真ん中にウグイス?