小松弘子のブログ

やさしいエッセー

清荒神の白蛇さま

 今年一月に兵庫県宝塚市の通称 『清荒神』 に、家族と一緒にお参りに行った。昔から庶民に親しまれ、特に一月の参拝者は三十万人いるという。年間では三百五十万人にもなるらしい。歴史的にも価値の高いお寺で、正式名は 『真言三宝宗清荒神清澄寺』 と言う。神社とお寺が複合している。この珍しい成り立ちを、あまり多くの人に知られていない。もちろんのこと私達も最近まで知らなかった。

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清荒神兵庫県宝塚市)

お正月の雰囲気が残った参道を、そぞろ歩きの人達に交じって山門に向かった。しばらくして一軒の商店の前に、大勢の人が立ち止まっているのが見えた。

「何の集まりだろう? 」 

時折、 「わあー」 と、いう声が聞えた。興味津々、声がする店舗に立ち寄った。大勢の人の隙間を縫って、店の中に入った。ぐるっと見回すと簡単な 「竹細工製品」 から、 随分と凝った手作り製品まで、ところ狭しと並べられていた。

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「まあ、良いものが沢山あるお店だ。今まで知らなかったが、ここは竹細工製品専門店で有名なのだ。なのだ。ひょっとしたら、何か面白いお土産物が見つかるかもかもしれない」

 その時だった。突然に、隣の女性が大きな声で叫んだ。

「わあっ、すごいのがいる! 以前に見た時よりすごく大きくなっているわ!」 

 一緒に来た友達に話しかけているようだった。

「ええっ、何がいるの! 」 

 その声に驚いて一瞬ポカンとした。ふと目がガラスケースに走った。

「わあー。白蛇がいる! まさか嘘でしょ! この店に似着かないものがいるなんて!」

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なんと驚くなかれ、一メートルを超える白蛇がぐにゃぐにゃ動いているではないか。蛇が大嫌いな私は、「ああ、しまった!」

と思ったがもう遅かった。 けれども落ち着いてケースの中を覗いてみた。そこには真っ白でとてもキレイな白蛇を前にして、不思議に怖いと思わなかった。

「年初めから縁起の良い白蛇様が、見られて良かった」 

と、何人かの声が聞こえた。全く同感だった。

「わあっ、こっちにもっと大きいのがいる! 」

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 大勢の中から息子の声が聞えた。慌てて人ごみをかき分けてガラスケースを見ると、もう一匹の白蛇が活発に動いていた。もう怖くなかったので白蛇の顔を観察した。少し笑っているようで可愛いと思った。

「まあ、初めて白蛇を見たけれど、雪のように真っ白で綺麗やなあ。こんなに綺麗だと思わなかったなあ。あれっ、このケースの横に子供の蛇が沢山いるよ」

 息子が言ったので、その周りの人達も、

「どれ、どれ」 とか、「すごく可愛いね」 と、話し合っているのが聞えた。もし、白蛇でなかったら、あちらこちらから悲鳴が湧き上がって、大変な騒ぎになっていただろう。 「白蛇さま」 で、本当に良かった。

可愛らしい四匹の子供の、それぞれのケースには名前が付けられていた。

「へえ、お母さんの名前が 『ちまき』 、お父さんは 『おもち丸』 子供は 『ゆきちゃん、みーちゃん、だいちゃん、ふくちゃん』 ね」

「あれっ、面白い。全部で アイスクリームの『雪見 大福』 になっている」

しかし、なぜ子供を含めて六匹ほどの白蛇が、ここで飼われているのかが疑問だった。不思議がっている客たちに、三人程の店員さんが説明してくれた。

その話によると、この店のオーナーが蛇好きで、今

いる白蛇はカナダから買ったらしい。

「なるほど、よく理解できたね」

 皆は店員さんの説明に納得している様子だった。改めてガラスケースの白蛇をじっくり観察したり、スマホのシャッターを押していた。私達も同様にスマホで『白蛇さま』 を、ありがたく映した。

 年初めの良い思い出になった。