京都知恩院・伏見稲荷大社を訪ねて
十月初旬を過ぎると、朝晩めっきり涼しい日が何日か続いた。そんなある日、庭に出てみるとキュウリの枝が、すっかり枯れているのに気づいた。ついつい夏に暑さのせいにして、夏野菜のプランターの片付けが遅くれたのだ。枯れたキュウリの枝は哀れに見えた。もっと早く手入れをすべきだった…。
そう反省しながらプランターを耕していると、小さな朝顔の花が一輪、淋しそうに残っていた。ああ、まだ健気にも咲いていてくれたのだ…。 この薄紫色はなぜか秋を思わせるしなやかな色だった。小さな秋の気配をしみじみと感じた。
今までになく秋独特の、どこかにけだるい寂しさはなんだろう…。きっと自分の歳の精かも…。
急にどこかへ旅に出かけたいと思った。そうだ、京都あたりのお寺が良い。ご無沙汰している知恩院や、足を延ばして伏見稲荷大社まで行ってみようか。
最近のニュースを見ると、コロナ禍の話題が少しずつ減ったように思う。代わりに国民の興味につながる「買い物や旅行、美味しいもの」 の、番組が多くなった。
最近は確かに 「GOTO・イベント情報」 と、いうキャンペーンが新聞やテレビで、にぎやかなくらいに叫ばれ、その言葉がもてはやされている。大人も子供も目新しい世界を、心待ちにしているのだろう。
事実、日本中の人が、生活の張りや楽しみを、早く取り戻したいと思っているのだ。小さな幸せをもたらす輪が広がろうとしている。また意図的に経済を立て直すための、政策の一環だろうと感じている。
そこで 「GOTOキャンペーン」 に、あやかって私達も、久しぶりにどこかへ行きたくなったから不思議だ。近場ですぐに楽しめるところを探した。
そうだ、京都方面なら今すぐにでも行くことできる。最終的には京都知恩院・伏見稲荷大社へ行くことに決めた。思い出せば昨年までの京都界隈は、海外からの観光客が八割ほど占めていた。現に京都界隈の年間の観光客は二千万人を超えていたと言われていた。
日本人の多くは、その現地の込み具合に驚き、京都から遠のいたものだった。ところが京都市内に入ると、
「えっえっ、どうなっているの?」
と、目を疑ってしまった。まず街中の観光客の少なさに驚かされた。全体で今までの三分の一くらいだ。こんな変わり方ってあるのだろうか? 京都中のバスやタクシーなど交通機関は勿論、観光客の姿がとても減っているではないか。信じられないくらいの変わりようで、コロナ禍の悪影響を恨めしく思った。一日でも早く、以前のような街に戻ってほしいと願った。
そんなことを思いながら、浄土宗大本山 「知恩院」 に、車を走らせた。緑あふれる念仏の発祥地にたたずむ壮大なお寺である。歴史と文化遺産に彩られた京都・東山のふもとに広がる知恩院。
案内書によると、ここに居を構えた法然上人が、初めて念仏の教えを説き、その尊い生涯を閉じた念仏の聖地なのだ。何といっても七万三千坪の広大な境内は上中下三段に画され、国宝級や重要文化財の多くの伽藍が立ち並んでいます。
法然上人は念仏と共に、人々と共に八百有余年の時を重ねてきたというのだから素晴らしい偉大な人だ。
また知恩院に伝わるという七不思議も知りたいものである。季節を問わず、いつお寺を訪ねても雄大な情景は、心が洗われたような気持ちになる。
私は幾度もお参りさせてもらったが、何度でも行きたくなるから不思議だ。機会があればまた訪れたいと思っている。
知恩院から少し離れた位置に、伏見稲荷大社があるので訪ねてみた。ここも昨に比べると、半分足らずの観光客で驚いたが、観光するには最適だと感じた。最近は修学旅行生や若い人たちに、とても人気が高いらしい。
早速に京都伏見区にある稲荷大社へ行った。有名な千本鳥居は、目に焼き付くような美しい朱塗の鳥居である。初めての見学だと大抵の観光客は、別世界の景色に圧巻されるだろう。
伏見稲荷大社は千三百年の昔から庶民の愛称で 「お稲荷さん」 と、呼ばれ稲荷神社の総本山である。
すぐ近くに三十位の小さなお稲荷さんを祀っている風景が見られる。何度訪れてもいろいろな発見ができ、飽きないと思う。特に最近では、外国人のベストスポットになっている。それほど伏見稲荷大社は有名な観光地の一つになっている。
今日は京都界隈を回ったが、これから秋本番の季節を迎えるので、次回は近場の奈良県に行ってみようと考えている。
さて、どんな旅に出会えるのか楽しみだ。
2020/10/27 #85