楽しいグラウンドゴルフ
十月十四日水曜日。今日はグラウンドゴルフを初めて見学してから、二回目のレッスン日を迎えた。初心者の自分が上達というか、慣れるために練習を始めようと思えば、少しはできた筈だった。
しかしながら、結局は一週間も経ったのに、クラブさえ握っていなかった。
「入会できたら絶対に練習をするぞ」 と、あんなに意気込んでいた自分が、恥ずかしかった。
窓から気持ちのいい青空が見えた。未熟な私が参加させてもらえるかどうか…。この一週間は正直なところ憂鬱だった。
といって、悩んでも仕方がないので、今朝起きてから決めようと考えていた。その時だった。
「お母さん、今日はグラウンドゴルフの日だね。行くのでしょう?」
いきなり出勤前の息子が、明るい声で尋ねた。
「勿論よ。先週行くと決めたのだから、顔だけでも出してくるわ」
私は心とは裏腹の返事をした。もう、今さら迷っているとは言えなかった。
「じゃあ、頑張ってね!」
「うん、仕事も頑張ってね。いってらっしゃい」
「もうこんな時間になったわ。急がなくては!」
時計を気にしながら、慌てて着てゆく服を探した。集合時間まで、あと十分しかない。
「服など何でもよいわ。どうせ今日も見学するつもりなんだから」
と、走って公園に向かった。途中で兄嫁さんが見えたので声をかけた。
「お姉さん、おはよう」
「おはよう、あなた今週の月曜日に来なかったけれど、会長さんに欠席の連絡をしなかったでしょう」
兄嫁さんのいきなりの質問に、びっくりした。
「ごめんなさい。連絡をしなかったわ」
「これから、ちゃんとしてね」
自分の中では毎週水曜日だけ参加するつもりだった。ああ、まさしく自分の失敗だ。これから何事も気を付けなくては…。当たり前のことだが、会長さんにもルールやマナーについての、アドバイスをいろいろ聞かされたのだ。
「初めての人はルールについて パソコンで調べてきて下さい。その方が大事です」
そうなのだ。何でもルールを守らないと、物事がうまく回らないことを…。今日はぐっと落ち着いて、皆の様子を見させてもらった方が懸命だ。
「あのー、すみません。会長さん、私はまだルールも分からないし、実技もできないので、今日も見学させて下さいね」
会長さんはウーンと頷きながら、
「そうですね…。その方が良いでしょう」
と、言った。
きっと、その方が無難かも…。初日のことを思い浮かべても、一時間半のゲームを観戦しただけだった。寒かっただけの印象が強かった…。
やっぱり、今日も観戦だけになりそうだ。いっそ、このまま家に帰ろうか? などと思いながら椅子に座っていた。
その時だった。後ろから女性の声がした。
「あのね、せっかく来られたのだから、参加しはったら? 見るだけでは時間がもったいないわ」
その通りだった。分かってくれる人がいるものだ。
「でも、ぜんぜん経験がないので無理だわ」
本当は参加したい。迷っているだけなのよ。しかし、今日は遠慮すべきが正解かも…。
[あら、大丈夫よ。何回か上手な人に教えてもらったら、上手く出来るようになるわよ]
私より若い美人のOさんが言うと、まわりの何人かが、同じようにエールを送ってくれた。
「まあー、皆さんどうも有難うございます。でも…」
その時、会長さんがこちらに来られた。
「あのね、僕もそう思うよ。さあ、僕のチームはベテランばかりだから、大丈夫だよ」
と、突然に激励してくれた。とても嬉しかった。
「初めは大変だけれど、そのうちに慣れて、打てる様になるものだよ」
「本当ですか? 心配だけれど…。でもやってみます」
と、即座に答えた自分に驚いている。
会長さんに導かれながら、いそいそとべテランの上手な組に、見習いとして参加できた。初めてのゲームは失敗ばかりだったが、とても楽しいと感じた。ゲームの面白さが少しずつ分かって、長く続けられそうに感じた。勿論の事、点数は度外視だ。
なりよりも皆さんに、勇気をもらったことが一番嬉しかった。最後まで仲間として、楽しくゲームをさせてもらったことも感激だった。親切で優しい人達ばかりだった。今日この日、グラウンドゴルフを諦めないで良かった。
本当に楽しい気持ちで参加できたこと、心より有難く感謝させてもらっています。
もし、今後この会に初心者が来たら、皆で 『エール』を送ってあげたいと思います。
2020/10/14 #84