小松弘子のブログ

やさしいエッセー

グラウンドゴルフを始める!

 十月六日の朝、いつもより早く目が覚めた。今日は何も出かける予定がなかった。さてどう過ごそうか? コロナ禍のせいか、最近はどうも運動不足気味の日が続いたように思う。

 ふと五年前に兄嫁さんに薦められていた、グラウンドゴルフの話を思い出した。そうだ、ずっと昔から、いつか参加したいと思っていたのだった。偶然に先日、兄嫁さんと久しぶりに会い、グランドゴルフの話を聞いた。その時に何か運命的というか、縁めいたものを感じた。

 そこで早速、近所に住む彼女に電話をかけた。

「もしもし、朝早くにごめんなさい。昨日いろいろ考えたのだけれど、一度グランドゴルフの見学がしたいの。今日は練習日だと思うので、もしよかったら一緒に、お願いできますかしら?」

「まあ、それは良いことだわ。どうぞ、どうぞ一緒に行きましょう。ああ、そうだわ。良かったらクラブが一つ余っているので持っていくわ。とにかく楽しいから、始められたら良いと思うわ。是非行きましょう」

 快い返事だった。五年前に息子さんからプレゼンされたが、上達したので今は使っていないクラブを貸してくれるという。わあ、良かった。クラブを貸してもらえるなんて最高。甥っ子の親孝行な顔が浮かんだ。昔から優しい子供だったことを思い出した。そんな気持ちの入ったクラブを握ってみたい。そして早く上達して、皆とプレーをしたい。

 しかしながら、グラウンドゴルフは初めてだった。全くルールは知らないし、少しいろいろな不安があった。が、今は楽しい気持ちが先行した。

 兄嫁さんが一緒なので、何でも教えてもらえるので安心だ。明るくて気さくで面倒味の良い人だ。そのことは昔から良く知っている。私にとって全く頼もしい存在で、今回も有難く思っている。

 また練習場所が家から近い公園なので、なりよりも好都合だ。年を摂ると大抵の人は、足が弱ってくる。安全で長くお稽古を継続するのには、必要不可欠な条件に入る。

 さて五分位で公園に着いた。とうとうグラウンドゴルフを始められる…。 久しぶりに子供のように、浮き浮きとした気分だった。

 周りを見渡すと七十歳代の人が多いように思った。全部で二十人位だった。男性の方が何人か多い。実のところ、さっきまで他人との交流も悩みだった。その時、自治会のカラオケ同好会の人が、、親切に声をかけてくれた。ああ、何も案ずることはない。すぐに皆と親しくなれるだろう。

 さあ、初めてのグラウンドゴルフだ。頑張ろう!

 兄嫁さんから借りたクラブを持って、突っ立っていると、会長さんらしい人が声をかけてきた。

「あのう、あなた今日初めて参加ですね。うろうろされると皆の邪魔になるので、端の方で見てください。紹介はしますけれど、ルールもありますので、よく分かってから参加して下さいね」

「はあ、どうもすみませんでした。ただクラブは今日借りただけで参加はしません。またグランドゴルフのマナーは何も知りません。よろしくお願いします」

 と言って、皆の後ろに下がった。風が少し寒かった。

 すぐにその日の、ゲームのメンバー表が張られた。

「ふーん、グランドゴルフとはどんなものなのか?」

興味津々で椅子に座って、一時間半のプレーを見学させてもらった。途中で顔見知りの人が、

「見ているだけでは、少し寒いから一人で練習をしたら?」

 と気付かってくれる親切な人もいた。

「有難う。大丈夫だからがんばってね」

 と答えたが、心は泣きそうになった。ここで帰ったら、もう二度とグランドゴルフとは、「おさらば」 になってしまうだろう。

 ゲームをしている皆は、幸せ一杯な表情だった。毎週この小さな公園で、週に二回の練習をしているという。この会が始まってから、もう十年以上になるらしい。

 何でも元々は 「ゲートボール」 の、会から始まったそうだ。そういえば三十年位前に、多くの人が笑顔で参加していたのを思い出した。

 あの頃自分はまだ勤めていたので、いつか参加したいと思っていた。自分もあんな風に老後を暮らせたらと、ずいぶん羨ましく思っていたものだ。

 今日この日、とうとう念願が叶い、この公園にいる。来週チームに名前が残るかどうか、不思議な気持ちでゲームを見続けた…。

 

2020/10/13 #83