小松弘子のブログ

やさしいエッセー

今 思っていること

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 今、私が思っていることは、やはり 『新型コロナ』 の、終息がいつになるかということである。昨日までは、この話をエッセイに書くことを避けてきた。あまり話題にしたくなかったからだ。けれども、もう自分の身に、この問題が避けられない状況になる可能性を感じた時、自分の記憶に留めないといけないと思った。そう、目に見えない恐怖を抱いたのは確かだ。毎日のマスコミの情報に踊らされ、いったい何が正しいのか分からなくなったりもする。勿論のこと、近所の人達と偶然に顔を合わせても、話題が 『新型コロナ』 に、いきつくことが多い。

 世間の誰もが 『コロナ』 の、最新情報を欲しがっているのを感じる。当然のこと、これに関する異常なまでの心配は分かるが、少し異常な気もしている。悲壮に思うだけでは、解決にならない。

 と言って、終息の予知が現在のところ何もない。一番怖いのは、先の見通しの確信が見つからないこと、あるいは人々が 『コロナ』 に、馴らされる時である。いつか終息が来るだろうと楽観視され、危機感を失うとも限らないからだ。

 また、誰もが確実な解決法を間違えて、誤った道に突き進む時だ。きっと人類は何十年後に、正しい結果見つけるだろうが、いづれにしてもその時を待つしかないのだろうか?

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 暇で退屈な日々が続いていた日曜日だった。仕方なくテレビを見るともなく、うとうとしている時だった。けたたましく携帯電話が鳴った。

「もう、やかましい呼び出し音だなあ」 

電話をとると、近くに住む次男からだった。

「もしもし、お母さん、元気にしているの? 今から家族と運動公園へ散歩に行くところだけれど、一緒に行かないかな?」

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最近まで高齢者の私に、散歩などの誘いは、あまりなかったので不思議に思った。

「毎日、運動不足の生活と違うの? 身体のために散歩とかをしないと、認知症になりやすいらしいよ。公園まで歩いてみる。どうする? 」 

まるで怠惰な姿を見られたようで、ドキッとした。

「実は運動不足で困っていたところなのよ。丁度、散歩に行きたいところだったので、皆と一緒に行くわ。先に公園へ向かっていて良いよ」

 と、答えると、

「急ぐと危ないから、急がなくていいよ。玄関で待っているから、ゆっくりしてね」

 次男の寛容な返事に一瞬、驚いた。いつもは、

「もう、何でもすることが遅いな。もっと早く支度してよ。皆に迷惑がかかるだろう」

 と、嫌がられていたのに、雲行きが変だと思った。そういえば近頃、優しい言葉をかけてくれる事が多くなった。もともと他人には親切な次男だが、最近までは親にはけっこう厳しかった。まあ、男の子だから仕方がないと思っていた。一体どういう変化なのか? ひょっとして母親の私が、老けて見えだし、急にいとおしくなったのか?

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 散歩の用意をして玄関に出てみると、次男だけが待っていてくれた。小学生の二人の孫達は待ちきれなかったのだろうか、見当たらなかった。

「ごめん、ごめん。遅くなって。あれっ、皆はもう公園に行ったのね。 あなたも先に行けばよかったのに」

「いいよ、いいよ。すぐそこの公園だから、追いつくよ。お母さん、運動しないと足から弱って、つまずいたりして寝たきりになるよ」

「そうなのよね。その通りだわ。たまたま、今日お買い物に行って、急いだものだから転んでしまったのよ。

まさか、チョットとまずいただけでドーンと転ぶなんてね。思いもよらなかったわ」

「本当に注意してよ」

「分かったわ。ああ、いまも打ち身のところが少し痛いわ」

「お母さん、けがは大丈夫?」

 次男は本気で心配していたので、私は内心喜んだ。大人だと運動公園まで、二十分位で行くことができる。

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 今日は次男とゆっくり桜並木や花壇を見ながら歩いたので、四十分位かかった。次男と二人で会話をしながらの散歩は楽しかった。こんなにのんびりと歩いたことも、全く初めてだったことに気がついた。 久々に幸せな気分を味わっていた。

 

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 その時、元気な子供の声が、だんだんと近くに聞えてきた。

「おばあちゃーん」

 スケボーに乗った二人の子供が、どーっとこちらに向かって走ってきた。もしかして、孫かなと思ったがハッキリと見えなかった。

 スケボーの一台は、二人の間で急に止まった。

「おばあちゃん、やっぱり公園へ来てくれたのね」

 女の子のすぐ後から、スケボーに乗った男の子がニコニコしながら、

「こんにちは、おばあちゃん」

 それだけを言って、ものすごいスピードで下へかけ抜けて行った。お嫁さんも子供達に遅れて、スケボーに乗ってベンチのそばに来た。

「お義母さん、こんにちは。お変わりないですか?

もし、マスクと消毒アルコールとかが無かったら、内にあるので言ってくださいね」

「どうもありがとう。今のところは足りているので大丈夫よ。もしも、なくなったらお願いね。それにしても、『新型コロナ』 騒動で、近頃は大変ね。あなたもお仕事に行けなくて困ってしまうわね」

と、言うと、 

「そうなんですよ。子供達も家から出られなくて、本当にかわいそうです。早く終息してほしいですね。でも、心配してもどうにもならないし…」

 お嫁さんは、若いせいかケロッとした返事だった。全くその通りだと思った。今、家族や近所の人達の間では、『コロナ』 に、感染していないようだが、いつ被害者とか加害者になる恐れは、誰にも起こるのだ。

 今日の日を大切にしたいと思った。

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