小松弘子のブログ

やさしいエッセー

再発見 神戸の魅力とは

 誰でも生まれ育った故郷の良さを、語りたくなる時がある。一つや二つの思い出を書き残したい衝動に駆られるが、深く突き止めようとすると立ち止まってしまう。当然のことだ。正直言って難しい。

 そこで私は、一番身近なところ、すなわち自分が育った町から始めようと考えた。

 戦後、少し落ち着いてきた昭和二十年代前半、神戸市の西のはずれの、小さな町で産声を上げた。三歳ころから二歳上の兄に連れられて、近くの須磨海岸で毎日のように、砂山を作ったりして遊んだものだ。

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須磨海岸

 この海岸へたどり着くのには、子供の足で二十分くらいかかったと思う。海に浮かんだ大きな船を見ながら、浜辺の貝を拾って遊んだりした。当時は時間の観念が全くなかったので、夕方まで家に帰らなかったことがしばしばあった。

 まあ、あの時代は安全だと思っていたのか、親も子供を叱ることなく、のんびりと待っていてくれた。

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 ある時、いつものように兄の友達と五人で須磨海岸へ遊びに行った時のことだ。もっと遠くに行ってみようということになった。そこへ行くには岩を超えなければならなかった。運悪く満ち潮になり、幼い私だけが皆に取り残されてしまった。寄せてくる波も次第に大きくなり、どうしても向こう側に行けなくなった。私は誰もいなくなった岸で、大声あげて泣き騒いだ。

 その声に驚いたのか、見知らぬ叔父さんが、

「泣かなくても大丈夫だよ。すぐにお兄ちゃんたちに追いつくよ」

と言って助けてくれた。あの時は無事に家に帰れて良かったが、親達にはもちろんのこと秘密にした。

 そんな怖い経験をしてからも、小学生低学年になっても毎日のように、兄たちと海や多井畑近くまで行って、そのあとに山で遊んだりした。この時は時間を忘れ、気がつくと周りが真っ暗になり、親たちにひどく叱られたものだ。

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須磨浦公園

 とにかく今思えば、須磨浦公園辺りまではよく行った。だから、自分の故郷を思うとき、須磨の海と山は、本当に懐かしく大好きなところだった。

 さて、「港町 神戸」 の、魅力について少しだけ紹介してみよう。神戸の街は、北に緑の六甲山があり、南に美しい海が広がり、天気に良い日には淡路島と本州最大の明石大橋が望める、独特の地形を持っている。その間を街並みが細長く東西に広がっている。

 飛行機の窓から見ると、その事実がよく分かる。また、海に囲まれたポートアイランドからの夜景は、言うまでもなくロマンチックで、何度見ても飽きない絶景だ。お薦めコースの一つであり、心が癒されるさまざまな素晴らしい景色が展開される。

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神戸港

 神戸港は今から百五十年前に開港された。それだけでも神戸の街が、昔からモダンでハイカラと言われるゆえんらしい。

 今も異国情緒をのこしている 『北野町界隈』 や、『メリケンパーク、南京町 』 。また、新しいところでは 『神戸ハーバーランドのモザイク』 にある、シネマや遊園地とおしゃれなレストラン街が、大勢の市民に喜ばれて、とくに日曜日と祭日は賑わっている。

 勿論のこと元町、三ノ宮には美味しいグルメの店や、素敵に飾られたスイーツの店が、豊富に点在しているので、出かけて行ってほしい。

 次のお薦めスポットは、県庁近くにある 『相楽園』 を見逃さないようにしたい。季節ごとに咲く菊や、つつじの花はとても美しく、広い庭園を彩っている。

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相楽園

 昨年の秋、ひさびさにお茶会を経験できた。三十分位でお茶会が終わると、綺麗に手入れされた庭に案内された。そこで見事に造られた菊の盆栽や、一本の菊から百個ほどの花を咲かせた菊を見ることができた。

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いろいろな菊の種類にであい、本当に感動させられた。園の中でお弁当を買うことができ、広いお庭でしばし寛ぐことができるスペースも造られている。以前はなかったように思う。

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ハッサム住宅

 また異国情緒が漂う 『旧ハッサム住宅』 を、ゆっくり見学できたのも良かった。ここの洋風のカーテンや、家具が建物にマッチしていて、古き良き時代に浸れる。素敵な空間を楽しめる場所なので、ぜひ立ち寄ってみて欲しい。

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 一年を通じて見どころが多い 『相楽園』 に、寄っていかないと勿体ない、勿体ない。

 そういえばもう一カ所 『瑞宝寺公園』 に、初めて行ったが、神戸の奥座敷に位置するここの庭園は、小さめだが古木の高さがあり、紅葉も綺麗だった。 

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瑞宝寺公園

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 しかしちょっとの見学で、駐車場代が千円かかるのがネックだ。もう少し安くした方が観光客にはうれしいが…。

神戸市立森林植物園、六甲高山植物園、再度公園』 辺りの、紅葉の美しさも見逃せない絶景である。

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神戸市立森林植物園

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再度公園

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 この辺りを散策していたら、有名な弘法大師の立て札見つけて驚いた。その足跡をたどり奥池周辺を歩いてみた。

「へえーっ、あの時代にこんなところまで行脚されたのか」 

と、しみじみと感心した。きっと、真っ赤な紅葉の数々を見て、素晴らしいと想ったのだろうと…。

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 この地域の紅葉は特別に、赤色と黄色の色彩が、はっきりして綺麗だと感じた。秋だけでなく普段も、神戸市民が何度でも訪れると土地柄である。神戸で手軽に紅葉見るなら、この辺りは自然が多く残っているので、一番美しいのではないかと思う。

 ハイキングを兼ねて訪ねてみてもいい。紅葉の見どころに選びたい。