小松弘子のブログ

やさしいエッセー

♪逢わずに帰ろう

 『逢わずに帰ろう』 は、机の上に原稿用紙を置いたとたん、「これだ!」 と、曲名が浮かんだ。久々にひらめいたので、忘れないうちに詞にしたいとペンを握った。

 いつも曲名が決まると、不思議に詞が書けることが多かった。今回も最初の一番の詞までは、スムーズに進んだ。ところが、二番の真ん中あたりになると、その先がパタッと書けなくなってしまった。

「アレー、いつものパターンになってしまった!」

 でも、また何日か経つと書けるだろうと、高をくくっていた。が、結局、全体の詞が仕上がるまでに一週間もかかってしまった。

 せっかく良い曲名を思いつき完成したが、いまいちだった。満足できる作品はいったい、いつの日か? 私の場合は趣味なので、余計に駄目なのかもしれない。 反省、反省…。

 さて初めての曲作りを思い出すと、もうかれこれ五年位前になるだろうか? とある新聞広告で、作曲の初心者でも、入会可能の記事を目にしたのだ。

 早速に三宮にあるカルチャーセンターへ向かった。私は何事も、あまり考えずに行動する癖があるので、息子達に良く注意されていたが、この時も例外ではなかった。

 作曲の講座は簡単に入会でき、すぐに教室に案内された。どんな人達が参加されているのだろうと気になった。教室には六人位の女性が、いろんな楽器で曲を作っているようだった。思い切って先生らしい人が見えたので、挨拶をした。先生はやさしく迎えてくれたので、本当にホッとしたことを思い出す。

 その日から三カ月がたち、あっという間に半年が過ぎた。そのうちに日程の変更のせいで、生徒の大半が退会したようで、顔ぶれがすっかり変わった。私と八十歳の人だけが残った。

「まあ、生徒さんが減って残念だけれど、仕方ないわね。さあ、三人で頑張りましょう」

 先生はそれからも明るく熱心に、私達に接してくれた。その後、教室を訪れる人もあったが、曜日とかいろんな条件が合わずに、入会しても辞めていった。結局、元の二人になったのだ。

 この頃から先生に、いろいろ教えてもらう時間が多くなった。まるで個人レッスンみたいだった。たっぷりと作曲に関してのノウハウを教わった。どんな些細な質問でも、気持ち良く教えてもらったことを覚えている。今から思えば本当に有難かった。

 入会して二年位して 『逢わずに帰ろう』 の、詞を先生にお見せした。

先生は私の詞を見て、

「ウーン、分かりました」

 と、言うなりピアノを少し弾き始めました。

「こんな感じはどうかしら? チョットだけ弾いてみるけれど、あとはあなたが考えてね」

 と、言ってピアノに向かって少し弾き始めた。その音色を聴くなり、

「うわー、この詞にピッタリの曲ですね。すごくイメージが湧いてきました。とても良い感じの曲ですね」 

 私は嬉しくなって、詞を見ながら続きを自由に歌っていました。先生はウンウンと頷きながら、

「その調子よ! その感じで良いわよ。さあ続けて歌って!」

 と、いつものように笑顔で言った。

「はい!」

 私は先生の言葉に安心して、そのまんま歌い続けた。そして講座の時間内で、曲が完成した。

「わあ、良い曲ができてとても嬉しいです! 有難うございました」

「信じられないくらいの早さでできて、本当にビックリね」 

 先生は良かった、良かったと心から喜んで下さった。

「さあこの調子で、これからもドンドン作りましょう」

 と、自身のない私を、毎回励ましてくれたおかげで、三年半くらいで、四十曲以上ができたのだった。その後、受講生が二人増え全部で四人になった。

 四人とも曲のジャンルが違っていたこともあって、教室の雰囲気が変わった。私以外の三人は、音楽に深く知識もあり、それぞれに楽器が弾けていた。

 それに引きかえ、私は楽器が弾けないコンプレックスに、いつも悩まされていた。そしてとうとう、教室から遠ざかるようになった。

「作曲は私には無理だったのだ」 

と、自分に言い聞かせた。あまり努力もしないで、これまできたのだから当たり前のことだ。本当に言い訳など何もない。

 後に作曲教室を辞めてしまったが、今までに先生に指導してもらった歌を、思い出としてユーチューブに残したいと強く思った。動画は息子に頼んで作ってもらうことができ、とても良い思い出なりました。

 この曲の編曲は、前田先生にお願いしました。思い入れがある歌なので、相談してみたら、

「この楽譜から考えると、ポップス調があっている」

と、お聞きしたのでそのように決めました。

ご指導頂いた皆さまに心より感謝しています。

 


♪「逢わずに帰ろう」唄:小松弘子 神戸在住シンガーソングライター

 

 

      逢わずに帰ろう 

 

 逢いたい 逢いたい けれど逢えないひと…

  

 逢いたい人は 貴方だけ

 なぜこんなにも 惹かれあう

 恋は 磁石の ようなもの

 男と女 離れられないの 

 春が来たって 夏が来たって 逢わずにいられない

 恋は情熱 恋はまぼろし あなた逢いたい…

 けれどいつか 別れがくるなら

 いっそ 逢わずに帰ろう 

 

 女はいつも 感じてる

 ふと すきま風が 吹くことを

 恋は孤独な モニュメント

 港に泊まる 外国船みたい 

 秋が来たって 冬が来たって ふたたび 帰らない

 愛は永遠 愛は哀しい あなた逢いたい… 

 けれどいつか 別れがくるなら 

 いっそ 逢わずに帰ろう

 

 恋は情熱 恋はまぼろし あなた逢いたい…

 けれどいつか 別れがくるなら

 いっそ 逢わずに帰ろう