小松弘子のブログ

やさしいエッセー

♪雨やどり

『雨やどり』 …。六年位前の秋だったと思う。この日の朝は早く目覚めた。することもないので、お布団にもたれてボーッとしていた。未だ薄暗く寒かったが、しとしとと雨の音だけが耳に入った。

 ふと、作詞講座の提出期限のことが、ずーんと重く頭をかすめた。次の作品が出来ていない。早く提出したいのはやまやまだが、肝心の題が見つからない。題さえ考えついたらなあー。

 窓の外に雨粒が見えた。雨粒が段々と大きくなり、何本かの糸状に流れ出した。ああ、そうだ! 

『雨やどり』 が良い。すぐに布団をたたんで、机に向かった。

すぐに原稿用紙の表紙めくって、いつもの筆ぺんで書くことにした。『雨やどり』 …。ウーン、良い詞ができるかも…。

詞の題から、内容が失恋ソングに発展するだろうと、予想した。詞を書き始めると、想像した通りの、せつない女心の言葉が次々に浮かんだ。今の自分とは違う、一人の女の恋の物語…。

数日後に、東京の通信講座で指導してもらっている 『板谷隆司先生』 に、提出した。

この頃は作詞口座の生徒になって、六年位経っていただろう。振り返ってみれば、詞を書くことが一番楽しかった時期だった。今回も提出してから三週間後に、先生から添削された自分の詞が、手元に届けられるのだ。開封する瞬間が、いつも不安と希望でワクワクするのだ。どんなふうな先生の詞の感想と、添削が送られてくるのだろうと、首を長くして待っていた。

戻ってきた添作文を見るなり、ため息が出た。

「わあ、やっぱり、まだまだだなあ」 

板谷隆司先生』 の、感想と添削を見て、

「なぜ、こんなに女心を表現できるのだろうか?」

と、不思議な気持ちさえしたものだ。いつも先生の作品は、結論から始まるものが多いと思っていた。だらだらと書くのではなく、物語を削って、できるだけ短い文章でまとめている。

板谷隆司先生』 は、ずっと以前から作詞家、作曲家として、ご活躍されている先生だ。そのことが分かったのは、もう十一年前のことだった。

 たまたま見ていた新聞欄に、通信講座の生徒募集の、とても小さな広告を目にした。一カ月の間に続けて三回目の広告を見た瞬間に、不思議な縁を感じた。パズルのような形式で、一つの簡単な詞に自分の思い思いの言葉を入れて、完成する方式だった。

 もちろん詞の題も自由で、表現できる内容も自由だった。ただ、所々の詞の枠外の言葉は、初めから書かれていた。つまり、詞が完成するとそれぞれの個性が試されるのだ。

 三度目に新聞広告を見た後、一度この広告に挑戦したくなった。

 それまで、詞を書いたり、詞の本を読んだことが全然なかったが、なぜか書いてみたいと思った。その日から、もう今年で十年以上が経ってしまったが、あまり努力をしていないので、私の腕は上がっていない。

 もし、『板谷隆司先生』 に、お会いできる機会があれば、最初に作詞を勉強させていただいた感謝を、お伝えさせて欲しいと願っています。

 偶然に 『雨やどり』 の、作品を四年後に歌にできて、ユーチューブで流せたこと、大変嬉しく思っています。

 今までご指導いただき、本当に有難うございました。


♪「雨やどり」唄:小松弘子 神戸在住シンガーソングライター

 

       雨 やどり 

 

 素直な 女に なれなくて 

 傘も ささずに 来たけれど

 やっぱり 独りじゃ 淋しいの

 意地で なくした 時を戻し

 あなた来るまで 雨やどり 

 

 別れて 初めて いとしさを

 恋の 苦しさ 知ったのに

 どうして わかって もらえない

 恋の 炎が 消えぬ間に

 あなた 信じて 雨やどり

 

 倖わせ たくさん くれたけど

 昨日 あなたと 口ゲンカ

 もう一度 心を 伝えたい

 夜明け 間近の しぐれ雨

 あなた待ちます 雨やどり