小松弘子のブログ

やさしいエッセー

やっと断捨離を始めました

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 寒い二月のある日、いつものように家でテレビを見ていたが、二時間を過ぎると時間がもったいなく感じられた。そうだ、街はコロナ禍であるが、今が一番暇な時期かもしれない。一日も早く何か行動を起こさなければ、大切な時間を無駄にしてしまうだろう…。

 その時、ふと 「断捨離」 の言葉が浮かんだ。今度こそは本気で考えてみようと思った。十年位前に一度 「断捨離」 を、実行してみようと思いつたことがあった。しかしながら、とうとう何もしないで十年が過ぎ去った。

 それからドンドンと家の中の洋服タンスには、サイズの合わない時代遅れのものが、所狭しと溜まっていった。

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 ある時、友人達との会話で 「断捨離」 が、持ち上がった。そこで自分の家の様子を話すと、

「イヤー、私の家も同じよ。本当にその通りで困っているのよ。この歳だから、早く 「断捨離」 を始めないと、残された者に迷惑よね」

と、言った。全くその言葉通りだが、しばらく経ってから何かしら淋しいものを感じた。ああ、やっぱり他人から見れば、私の周りのすべてのものが、無用の長物だろうな…。

 この種類の問題は今までに何度となく、友人の間で良く聞いた。うすうす近い将来に必ず自分にも振りかかってくると覚悟をしていたつもりだったが…。

 その夜、布団の中で 「断捨離」 に、ついて考え自分なりに結論を出した。あくる朝の日曜日は、なぜかスッキリした気分で息子に相談した。

「そろそろ家の中の物を整理しようと思うのよ。今のままじゃ、物が多くて狭くるしいし、これからはちょっとでも、広く有効に使った方が良いものね。ドンドン年も採るし、身体がついていける間に始めないとね」

「全くそうだと思うよ。お母さんの洋服も僕の物も捨てるのは勿体ないけれど、古い洋服類は結局のところ無駄になってしまうものね。最近テレビでよく聞くけれど、五年間、一度も着ないものは絶対に将来も着ないらしいよ」

「そうよね。さあ、ほとんどの物を 「断捨離」 しましょう。さっぱりするわ」

 長男は快く賛成してくれ、協力してくれそうに感じた。将来の生活が少しでも快適に暮らせるように望んでいることが分かり、本当に嬉しかった。

「思い出のある洋服は、少しぐらいなら残しても良いと思うよ」 

「いいのよ。そうと決まったら 「善は急げ!」 で、手始めに簡単な三つの洋服たんすに、焦点を当てることにしましょう」

 私は敢えて明るい声で 「断捨離」 の旗を振った。そう、少し時間に余裕のある間に、中身のある 「断捨離」 が、できそうな気がした。

「断捨離」 の言葉が、主婦の間で瞬く間に流行したのは十年位前だと思う。マスコミのお陰でというか、良いか悪いがは別にして、一般の人々の物に対する価値観が、いっぺんに変化した時代が訪れた。

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 最近、コロナ禍で 「お家時間」 が増え、友人の会話の中にもこの言葉が話題になっている。以前まで私は 「断捨離」 の意味も解らずに、なぜかこの言葉に不快感を持ち、嫌いだった。物を大事にしないで捨てることに長い間、罪悪感がつきまとっていた。昭和生まれの同世代の多くは、現在のように豊富に物がなかったため 「断捨離」 に、否定的な見方が強いと思っていた。

 しかしながら、世の流れというか、だんだんと 「断捨離」 も、正当化され続けているみたいだ。フランスのパリでは、地代が高いため一般人の所有する洋服や食器類の数は、日本人よりも少ないという。

 そのことを知るとなぜかホットした。ゆっくりと家の中を見回すと、不要なものが次々と見えてきた。食器類もあまり使わないものは、倉庫へ直そうと考えた。

「お母さん、使わない食器はこの際、全部処分したら?」

 整理を手伝いに来た、次男の提案に少し違和感を持った私が、声を荒らげて言った。

「みんな捨てれば片付けは楽だけれど…。どれも新品なのよ。老後の生活の楽しみに、一つづつ集めたものばかりなのよ」

 私は少し腹が立って、不機嫌な顔つきななったのだろうか…。

「ごめん、ごめん。そういう意味じゃないよ。少しくらいなら残しても良いよ」

「ああ、いいのよ。将来に使うものだけを食器棚に残して、あまり使わないものは倉庫に収めるわ」

「うん、その方法が一番良いと思うよ」 

 二時間くらい経って、整理が一段落すると、

「今日は他の用事が残っているので、また手伝いに来るよ」

と、言って帰っていった。それきり次男はしばらく来なくなった。後でわかったが、次の週に 「ぎっくり腰」 になり、今も痛みがあり手伝いに来られないらしい。

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 その後、日曜日の度に、長男と二人で家の中を片づけた。「断捨離」 を始めて二か月、随分と物を減らしたつもりだが、実際にはあまり変わっていないと感じた。原因は、やはり捨てられないものが多くなり、タンスに戻したからだ。

 それから一カ月後、洋服類を思い切って半分くらいに減らしてみた。ついでに家具も移動してみると、随分と部屋が明るくなりスッキリした。

 かくして我が家の 「断捨離」 は、一応 今のところ成功した感じだ。とにかく部屋の 「風通し」 が、良くなり気持ちが良いことは確かだ。

 最近は思い切って 「断捨離」 を、実行して良かったとつくづく思っている。

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2021/04/21 #102