師走に人気の葉牡丹
近畿地方も御多分に漏れず、十二月中旬頃から急に寒くなった。冬の陣の到来である。北風が冷たいこの時期になると、いつも 「葉牡丹」 が、恋しくなりランターを準備するのが恒例になっている。
二年位前までは 「葉牡丹」 を、買うため少し遠くの園芸店まで足を延ばしていた。ついでに来春用の球根類や、草花の苗などを買っていた。
一昨年のある日、年末の買い物があったので、近くのショッピングモールに行った。例年はとても混雑する時期なので、このスーパーを避けていたが、電器店で電池を買う必要があり店に入った。
入り口のドアを開けた瞬間、すごく綺麗な大量の 「葉牡丹」 が、積み込まれているのが見えた。よく見ると他の花類の苗も、沢山並べられていた。
「エエッツ、何の催しだろう?」
売り場で学生らしい女の子が数人楽しそうに、お喋りをしていたので、
「今日は何か珍しい催し物でもあるのですか?」
と、一人に尋ねた。
「はい、今日から二日間学校で育てた 「葉牡丹」
を売るのです。良かったら見ていって下さいね。今年も一生懸命作ったので、とても綺麗に仕上がったと思います。 お一ついかがですか」
はつらつとした声に圧倒された。
「なるほど、すごく元気の良い 「葉牡丹」 ね。まるで皆さんみたいね」
と、言うと
「わあ、恥ずかしい! ワッハッツ」
と、こぼれんばかりの喜びようで、まわりの買い物客が驚いて振り返った。
「実はね、丁度今の時期、「葉牡丹」 を買おうと思っていた矢先だったのよ。いつもは他で買っていたのだけれど、良いのが見つかったので、ここで揃えようと思うのよ。まあ、どれもこれも見事に綺麗に育っているのが分かったわ。できることなら全部持って帰りたい気持ちだわ…。それに、こちらこそ元気な 「葉牡丹」 が見つかり助かったわ」
「わあ、本当ですか? 嬉しいわ! 有難うございます。数年前からこの店で販売させてもらっているので、来年もよろしくお願いしまーす」
どの子もとても愛そうがよくて印象が良かった。
また現代っ子らしくて、自分達が心をこめて育てた 「葉牡丹」 を、誇らしく宣伝をしているのが可愛いと思った。
「じゃあ、皆さんの大切な力作を買わせてもらうわね」
と言って、見本の一番長持ちしそうなものを選んだ。
それから後、毎年農業高校生が丹念に育てたという 「葉牡丹」 を買うことに決めた。久しぶりに若い人と、たわいもない会話をするのも楽しいと思った。
今年も師走になり絶対この店で 「葉牡丹」 を、買おうと事前に開催の日を聞いた。しかしながら、「葉牡丹」 は、実施するのだが、残念がらコロナの影響で、農業高校の生徒たちは参加できないことが分かった。
きっと、生徒たちは腕を振るって育てた 「葉牡丹」が、販売できずに悔しがっていることだろう…。皆、本当に残念がっていると思うと、切ない淋しい気持ちになった。あのはつらつとした声が聞けないのは残念だった。
そう思いながらショッピングモールピングに行った。なんと売り場には、生徒達が育てた 「葉牡丹」 が少しだが並べられていた。ああ、良かった! それだけが、せめてもの救いだった。
今年の 「葉牡丹」 も、とても綺麗だったよ! 皆よく頑張ってくれて本当にありがとう。
早く、コロナが終息して、きっと来年は皆さんと逢えるのを待っているわね…。
2020/12/19 #94