小松弘子のブログ

やさしいエッセー

誕生美はお好き?

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 一月二十六日は私の誕生日である。誕生月だからと言って、最近は誰にも言えない年である。もし、冗談で歳を聞かれたら、「当年(十年) 取って六十歳」 と、答えることにしている。六十歳以上は年を摂らないことにしている。勿論のこと精神衛生上でのお話である。

 昔から日本人の男性の多くは、女性の値打ちは 「お年」 らしいのだ。まあ、間違っていない? かもしれないけれど、本当に腹が立つと、多くの女性は思っている。まあ、残念だけど容貌はもちろんのこと、女性の魅力は半減することも認めるが…。

 平安時代の美人で有名な 「小野小町」 でさえ、百人一首で嘆いている。

「花の色は移りにけりな いたずらに わが身世にふるながめせしまに」 

 しかしながら実は男性も同じじゃないの? と、反省してもらいたい。が、世間では何かと不利益になるから、今回はこの辺でやめておこう。

 さて、今年の誕生日が近かづいたが、毎年嬉しいやら淋しいやら、感慨深く複雑な気持ちだ。まあ、何とか家族だけでも覚えてくれればよい。 

 と、思っていたら友人三人から、「誕生日おめでとう」 の電話をもらった。そのうちの一人、F子さんの電話は本音ばかりで、いつも面白い。

「コマッちゃん、誕生日おめでとう。あなた今年で何歳になったの?」

「あら、何年たっても、あなたより年上にはならないわよ。安心して!」

「ワハッハッツ、それはそうね。ところで、お元気そうで良かったけれど、実は主人がね、「中納言」 で、あなたの誕生会をしてあげようかと言っているのよ。伊勢海老は好きかしら? 好きだったら遠慮せんといてね。久しぶりにぜひ三人で出かけましょうよ」

 F子さんの思いがけないお誘いに、とても嬉しかったが、少し戸惑ってしまった。

「いやあ、私の誕生日を覚えていてくれてありがとう。 誕生日まではっきり言える人は、あなたと体操教室の先生ぐらいだと思うのよ。今さら言いにくいけれど、あなたの誕生日は全然知らないので教えてよ。エエッツ、真夏の八月二十九日だったの。まだちょっと先ね。その日まで、お互いに元気でいられたら良いね」

 いつも近況の電話をもらっているので、今度は私から 「お誕生日おめでとう」 を、言ってあげたい。

「F子さん、伊勢海老料理なんて嬉しいけれど、しばらくは家で、おとなしくしている方が無難じゃない?」

「そうやね、よく考えたら今の時期、お互いに安全が一番ね。あーあー、残念だけれど仕方がないわね」

 やさしい姉御肌のF子さんの切符の良さに、今回も感謝している。昔から有名ホテルでの食事会や、三ノ宮や元町の一流料亭へ、お呼ばれしたこともたびたびあった。

 私は若い頃どちらかというと、地味な性格だった。F子さんはグルメ通で、珍しい料理や美味しいものが大好きで、特にお肉が好物だと言っていた。とても明るい性格で、あまり小さなことに動じない、セレブな感じを受けた。いつも私とは正反対だと思っていた。

 そんな彼女とは二十五年位前、私が社交ダンスを習い始めた頃に偶然に知り合った。その頃の第一印象は、とにかく映画女優の 「エリザベス・テイラー」 に、よく似ていてすごく美人だと思った。

初めてそのことを褒めると、

「わあ、有難う。若い頃は友達によく似ていると言われたものよ。ただし、私の場合は皆から 「首から上だけは最高よ。ただし中身のスタイルはよく分からないよ」 と言われたものよ。 ワッハッハッツ」

 と、謙遜しながら大笑いするので、長年のあいだ不思議に思っていた。スタイルも 「超ボイン」 で美しい。よく観察しても、決してどこも可笑しくはなかった。一体どういう意味か分からないので、彼女に尋ねたが、いつも笑って教えてくれなかった。

 が、ある時、彼女がそっとその秘密を教えてくれた。

「私はいつも黒系を多く着ているでしょう。黒や白色はシンプルだけれど、細身に見えるのよ。昔から女優さんは 「シンプル イズ、ベスト」 を、モットーにしている人が多いのよ」

 なるほど、秘訣はそうだったのか! 私も負けずに真似をしようと努力したが、結局は成功しなかった。

 理由は明らかだった。肝心の 「顔」 が、邪魔をした。当然のことF子さんや女優さん達と、大きく違い過ぎたからだ。ああ、残念だ!

 

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2021/02/05 #100