小松弘子のブログ

やさしいエッセー

鞆の浦、尾道、湯原温泉の旅㈡

一月三日の朝五時に神戸を出発した。まだ外は真っ暗である。空気は冷たいが気持ちの良い朝だった。 

 車は午前六時半に山陽道西行きのサービスエリア 『龍野西』 に着いた。 ここで早速名物の『卵かけごはん』 の朝食を頂くのが習慣になっている。

 ここの 『卵かけごはん』 は、シンプルだがいつ食べても確かに美味しい。しばらくの間、朝食は他に考えられないだろう。

 サービスエリアを出発して、ようやく七時すぎに日の出が見られた。ここから今回の旅の最初の目的地、広島県福山市鞆の浦に着いたのは午前十時頃だった。車を降りるとすぐ穏やかな瀬戸内海が広がる港町に着いた。お正月のせいか町全体が静かだ。カモメが飛び交う浜辺は、潮のにおいで一杯だった。久しぶりにのんびりとした空間を味わった。趣のある土産物店や、古い時代の燈台が、よき昔を偲ばせていた。

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鞆の浦広島県福山市

「へー、昔の漁港がまだ保存されているし、とても雰囲気があって良い町やなあ」

 息子はこの景色を逃すまいと、写真とビデオで必死に撮っていた。私と友人も初めてみる 『鞆の浦』 の景色に心を奪われた。どこを一つとっても、素敵な一枚の絵になっている。

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 かれこれ一時間くらい街を散策しながら、ついでにお土産物の海産物を買った。歴史のある小さな港町ではあったが、飽きないものが沢山あると感じた。

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 鞆の浦の少し西に、尾道市 『千光寺』 があると知り、見学したいと思った。しかしながら徒歩でお寺に辿りつくには幾つかの坂道があるらしい。私と友人は無理だと思い諦めた。お寺から戻ってきた息子に感想を聞いた。お寺の境内からは尾道市の全貌が見え、風光明媚なところだと聞かされた。ああ、私達二人は行けなくて残念だったけれど仕方ない。

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尾道市広島県

 さて今日の旅の最後は、しまなみ海道を乗り継ぎ、生口島にある 『耕三寺』 を訪れるのだ。このお寺は群馬県の有名な東照宮に似せて造られている。

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耕三寺

お寺の立派な門をくぐると、原色に彩られた壮大な建物が姿を現した。『西の日光東照宮』 と呼ばれるくらい、お寺の景観がそっくりで何とも美しい。全体の建物の色彩は、赤や黄色、青、緑が多く使われ、日本のお寺と比べると派手な印象だった。敷地面積も割合広くて見ごたえがあるので、お薦めしたいお寺だ。

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その隣に洋風の真っ白い塀が見えた。何だろうと不思議に思い行ってみた。何と見たこともない大理石で造られた沢山のオブジェや、真っ白な建物があった。全部イタリア産の大理石で造られているとのことだった。ここも少し変わったものが見られるので面白い。

時計を見ると、あっという間に午後三時を過ぎていた。もう出発しないと宿泊地到着が間に合わない。急いで岡山県に戻り、湯原温泉の 『米屋』 に向かった。お宿に着いたのは午後五時だったので、何とか間に合った。

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 3年前にも止まったお宿だ。以前は雪が積もり屋根に氷柱ができていたが、今回は暖冬で雪はなかった。

 「ごめんください」 フロントで声をかけたが誰もいない。繁忙期だから仕方がないが、後からのお客さんもブツブツと文句を言っていた。合理化の波がこの業種にも忍び寄っているのだろか? まあ時代の流れというか、半分諦めているが、このままで良いのだろうか?

 ようやく部屋に案内され30分ほど休憩後、待望の温泉に向かう。

前に来た時とは違っていて内湯、露天風呂はリニューアルされていて新しく開放的で気持ちがいい。いいお湯だ。心も身体も思いっきりリフレッシュできた。

 夕食の時間になり食堂に行った。満席で従業員の人がとても忙しそうだった。誰でも日々忙しすぎると、あまり物事を考えなくなり脳が退化するらしい。本当のことかも?…。

 夕食のお料理は品数も多すぎるほどで満足だった。どれ一つをとっても真心が感じられ、美味しいと思った。

 朝八時に旅館を出発した。

「さあ、今日はどこへ行こうか? 冬だというのに暖かいし、『蒜山高原』 はどうかな?」

 友人が提案したので、

「いいところよね。あそこのヨーグルトは美味しいね。そこに決めましょう」

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蒜山高原岡山県

 ということで、冬の 『蒜山高原』 に着き、美味しい空気を胸一杯吸った。

「その次は奥大山を見たいな」 

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山の奥に見える大山

 と皆の意見がまとったので出発した。遠くから見える雪の大山は、想像していた以上に迫力があり美しかった。途中何度か車を停め、写真を撮る。大山の絶景スポットへ向かおうとしたが雪のため通行禁止でたどり着けなかった。本当に残念だったが、近くに 『奥大山国民休暇村』 を見つけた。

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さすがにここまでくると建物の前庭に新雪が積もっていたので、雪を握りしめた。雪が見れるとは思っていなかったからここまで来れて良かった。ここはスキー場を併設しているようで、子供達が雪の上で楽しそうに遊んでいた。このとき孫達もここに連れてきたらきっと喜ぶだろうなと思いつつ、帰路に向けて車を進めた。