小松弘子のブログ

やさしいエッセー

桜を求めて

 明るい春の日差しを感じる今日この頃、日ごと桜の話題が増えてきた。花好きな私には嬉しい季節である。連日のようにテレビや新聞のニュースで、桜の開花を知らされる。日本の桜は世界中で、一番美しいと言われている。

平年に比べ今年は東京方面の桜の開花が早くて、四月一日にもう満開をむかえた。関西では開花が遅くなり、見ごろは一週間後になるらしい。平年よりお花見が遅くなり残念だ。

私は桜の花を一日でも早く見たいと、まだ肌寒い四月六日に、西宮市の桜の名所の夙川公園を訪れた。公園に着くまで満開の桜を期待してワクワクしていたが、まだ四分咲でお花見には程遠かった。それでも川べりは綺麗に咲いていたので嬉しかった。公園付近は花見客で一杯だった。日本人は桜が本当に好きな人種だと、あらためて感じた。

f:id:komatsuhiroko:20200129172342j:plain

夙川公園(西宮市)

次の朝、体操教室の仲間と顔を合わせたので、近くで桜が見られないかと尋ねた。

「おはよう。昨日西宮市の夙川へお花見に行ったのだけれど、まだ早すぎて残念だったわ。あなたはどこかでお花見された?」

「ううん、まだなのよ。この近辺もあまり咲いてなさそうよ。今年の春は寒くてお花見どころじゃないわ。それに今頃の季節にコートを手放せないのも、少し変だわね。本当にいつまで待てば咲いてくれるのかしら」 

 全く同感だったので少し可笑しかった。

「まあ、そのうちに咲くでしょう。今年は気長く待つことね」

 やっぱり関西地方の桜の見ごろは、まだ当分先になりそうだ。誰も満開の時期を予想できないようだった。

その次の朝は、たまたま長男の勤務がなかった。

「お母さん、徳島県神山町の桜が満開らしいよ。以前から一度行ってみたいと聞いていたからね。今から桜を見に行ってみようか?」

「まあ、満開の桜街道が見られるなんて滅多にないから嬉しいわ。今すぐに出発したら、十一時過ぎには到着できそうね」

 桜見物にはもってこいの日和だ。早速、二人で車で行くことに決めた。また数日前に四国参りの歌ができ、今回桜街道がビデオカメラに収められたら、きっと役立つに違いない。

「わあ、ついてる、ついてる」 

 思わず斎藤一人さんの有り難い言葉が出てきた。信じるものは救われるか……。

 自宅を午前八時半に出発。淡路島の満開の山桜を横目に、鳴門海峡を十時に通過した。そのまま高松道に乗ったが、一度、徳島県吉野川を見たかったので市内に入った。少し行くと、すぐに雄大な川の流れが見えだした。やはり川幅が広くて大きい川だ。とうとうと流れる水に、ふと昔のことがしのばれた。

 何かの用で父母の故郷である徳島県へ家族五人で行く途中に、この吉野川に出会った。初めて乗る渡し船は珍しくて楽しかった。澄み切った川の美しさに惹かれ水を触ってみた。身を切るような冷たさだったが、船から降りるまで川面を見ていた。

 そんな遠い昔の思い出に浸っていたが、息子の声で我に返った。

「お母さん、もうそろそろ出発しないと、目的地に行くのが遅れるよ」

「はーい。さあ、待望の神山桜を見に行きましょう」

 カーナビを見ながら、桜を求めて山の方へ向かった。カーブが続く中、途中の道には枝垂れや山つつじなどが、沢山見られた。

f:id:komatsuhiroko:20200129172622j:plain

神山町徳島県

 走行中に桜祭りののぼりが目についたので、駐車場に停めた。平日だがどこも観光客でにぎわっていた。春風に揺れる神山町の桜街道のしだれ桜は、素晴らしく綺麗だった。他の花々も肥料が良いのだろうか。全体にいきいきとした美しさが際立っている。

f:id:komatsuhiroko:20200129172905j:plain

 桜の花は鑑賞できる期間が二週間ほどで、運が悪いとその年の満開の桜を、見られない場合がある。

今回は存分に桜の花を鑑賞でき、本当に満足な旅だった。