小松弘子のブログ

やさしいエッセー

街歩き 美しい日本とは ①

 二〇二〇年まであと残すところ二年で東京オリンピックが開催される。昨年から、それに向けてかどうか分からないが、初めて日本を訪れる外国の観光客にも知識と興味が持てるテレビ番組を放送している。勿論のこと日本人が見ても、今まで知らなかった全国の街歩きを楽しめるように企画してあるので面白い。日本の色々な地域の都市や村を紹介している。所謂お決まりの美しい日本の風景を見せるだけでなく、街の成り立ちの歴史や特色を盛り込んでいる。テレビを見るだけで、人の暖か味や親しみが伝わる番組だ。

 某テレビ局で毎週一回、日本の様々な街の情報を、楽しく詳しく伝えている。今年の一月で九十回になる人気番組だ。あまり有名でない小さな街の歴史が分かって面白い。

 

 この番組に登場する司会者の男性は、マスコミの世界でとても有名である。独特のカラーを感じさせる風貌で、高い教養を持ち合わせている人気者だ。

 この番組は全国各地の特色を、毎回テーマを絞り込み放送している。美しい風景だけでなく、独特の伝統芸術や歴史、文化など現地を歩きながらキャスター達が自分の感想やエピソードを交えて案内してくれる。テレビを見ていて、まるで自分が一緒に旅を楽しんでいるように錯覚することもある。

 

 つい最近まで、このテレビ番組に釘づけになっていたが、先週の東京都大田区にある「田園調布の街」を見てから、一瞬にして興ざめる数々の不自然さを覚えた。

 日本で一番の超セレブな人達が住んでいる街は「田園調布」だと言うのだ。駅もしゃれていて、フランスの凱旋門に似ているという。街並みがとても美しくイギリスのガーデンシティ―並みだと言っていた。実際にはヨーロッパの風景とは雲泥の差がありすぎる。全く比べものにならない話に驚いた。

教養も知識もあるタレントさんの、あまりにもひどい話にウンザリだった。

もしヨーロッパ人がこの番組を見たら、おなかを抱えて笑うだろう。

「それはないでしょ」と……。

それをその言葉通りに放送したテレビ局は何を考えているのか。

 なるほど、「田園調布」の今の地価は一坪当たりビックリする値段がついている。何と一千万円だ。五十坪で五億円となり、庶民には高根の花である。誰でも手が出ない。この土地に住めるのは現在は政治家か医者、芸能人、スポーツ選手等で有数の著名人が購入しているらしい。

 

 百年前「田園調布」界隈は、もともと畑であった。景色も日本のどこにでもあるような、ありふれた村だった。昭和の時代になって渋沢秀夫がサラリーマンでも持てる家をと、新しいタイプの街づくり構想をした。ヨーロッパ各地の有名な街を真似て作ったのだが、なんせ規模がとても小さい。駅前を中心に放射状に街が作られている。昭和時代にサラリーマン向けに分譲住宅として開発した。売値は今の価格で三千万円だったので高級とはいえない。大正時代は軍人が五、六人と政治家が数人、あとは一般人だった。

 

つづく